世界の普及促進策は?(2)東南アジアでの再生可能エネルギー普及促進策

世界の普及促進策は?(2)東南アジアにおける普及促進策

(ア)フィリピン(FITとRPSを導入)

a 政府の動き

フィリピンでは、2008年12月、バイオマス(生物資源)、太陽光(熱)、風力、水力、地熱及び海洋エネルギー等、幅広い再生可能エネルギーの開発と利用を促進するため、再生可能エネルギー法が成立しました。

同法は、再生可能エネルギー開発事業の商用開始から7年間の所得税免除、必要機材の輸入関税の10年間免除、設備設置にかかる土地の特別不動産税率の優遇、商用開始から3年間の赤字分を次の7年間の収益から控除する等の優遇措置を定めています。

同法の成立を受け、再生可能エネルギー開発案件は急増し、同法の適用承認を受けたプロジェクトは既に数百件を超える数となっています。

また、同法に基づき、フィリピンでのFIT導入も決まっており、買取り期間は20年とされる予定とされています。

フィリピンでは、FITと同時にRPSも導入し、両者は併存することとなっており、日本ではFITの導入に合わせて、RPS法を廃止するのとは対照的です。

b 企業の動き

企業の動きも活発化しており、地場系石油採掘企業のサウス・チャイナ・リソーシズ(SCRI)は、FITの詳細を見極めながら、地熱、水力、太陽光発電等の再生可能エネルギー開発の新事業参入を検討しているとのことであり、シーメンスは、FIT導入を踏まえ、風力発電事業への参入を検討している状況です。

日系企業では、伊藤忠商事株式会社と日揮株式会社が、地場資本との合弁で新事業会社 GREEN FUTURE INNOVATIONSを設立し、2012年2月から、サトウキビ搾りかす(バガス)を燃料とした19MW規模のバイオマス発電事業を開始する予定となっています。

(イ)インドネシア(地熱発電に大きな可能性)

a 政府の動き

インドネシアにおいては、旧来より電力不足が指摘されていますが、PLN(国営電力公社)は、今後の経済成長を踏まえ、2010年から2019 年における全土の電力需要の伸びは年平均9.2%と予想しています。

インドネシア政府は、電力不足解消のため、2006年7月に第1次クラッシュプログラムを、2010年1月に第2次クラッシュプログラムを策定しました。(なお、第1次クラッシュプログラムは、そのほとんどを中国企業が受注しましたが、資金繰りや技術的なトラブルが相次ぎ、現在においても十分に稼働している発電所はないという状態です。)

第1次クラッシュプログラムは、中小規模石炭火力だけを対象としていたのに比べ、地熱(全体の39%)や水力(12%)等、再生可能エネルギーの開発に重点を置き、独立発電事業者(IPP)方式を全体の49.6%導入する、といった特徴があります。

また、インドネシア政府は、第2次クラッシュプログラムと併せて、地熱、風力、バイオ燃料、太陽光、水力、海流・海洋温度差等の再生可能エネルギーを利用した発電事業に対する税制優遇措置を導入しました。税制優遇の内容は下記のとおりです。

①投資合計額の30%相当額の課税対象額からの控除(6年間にわたり各年5%)、固定資産償却期間の短縮、国外への利益送金の源泉徴収税率について10%への低減、欠損金繰越期間の最大10年までの延長。

②特定戦略的な関連機械・機器の輸入時の付加価値税の免除。

③関連機械・機器の関税免除。

④政府予算に基づく税の優遇(戦略的な機器類・部品の輸入に対する輸入関連の税軽減を図る)。

b 企業の動き

経済産業省の委託で実施された国際協力機構(JICA)開発調査「インドネシア地熱発電開発マスタープラン(2007年9月)」によると、インドネシアには、2万7,000MWの発電が可能な世界最大級の地熱エネルギーがあるとされています。

その中で、インドネシアでは地熱発電設備全体の約50%を住友商事株式会社と富士電機ホールディングス株式会社の共同体が手掛けており、2010年2月にはウルブル地熱発電所(110MW)の建設工事を両社で受注しました。これは過去最大規模のものであり、地熱発電事業推進は加速している状況です。

また、伊藤忠商事、九州電力、現地の大手エネルギー系持株会社メドコ、バイナリー発電プラントメーカーのオーマットによるコンソーシアムが、北スマトラ最大のサルーラ地熱発電所(約300MW)の建設についてインドネシア電力公社(PLN)と協議しており、

IPPプロジェクトの行方に注目が集まります。

(ウ)シンガポール(太陽光に期待が集まる)

a 政府の動き

シンガポール政府は、スマートグリッドを含む複合技術の研究を通じて再生可能エネルギー普及と省エネルギー化に取り組んでいます。

熱帯気候のシンガポールにおいて、太陽光エネルギーは再生可能エネルギーとして最も期待されている資源です。

政府は太陽電池設置や省エネ関連製品の導入拡大に向け、支援を積極化しており、住宅開発庁(HDB)は、2010年第4四半期に国内最大規模の太陽電池パネルを設置した公共住宅(HDBフラット)の実証実験を開始しています。

b 企業の動き

日本の中小企業も実証実験に参加しており、農業用の機械器具メーカーからガラス用の遮熱塗料の販売・施工会社に転身したフミン(福島市)は2010年2月、HDBフラットのエレベーターの窓ガラスに同社が開発したコーティング材を塗布して実証実験を行いました。その結果、エレベーター内の気温が2度下がるなどの効果が認められ、2010年8月からHDBフラットへの導入が始まっています。

(エ)マレーシア(FIT導入)

マレーシアでは、2011年4月、FITの導入を盛り込んだ再生可能エネルギー法と、再生可能エネルギーの担当官庁である持続可能エネルギー開発庁の設置法が可決、成立しました。

マレーシア政府は、2010年に策定した国家再生可能エネルギー政策・アクションプランにおいて、全体の発電量のうち再生可能エネルギーの発電量の割合を段階的に高める方針を示しており、2015年に5.5%、2020年に11%、2030年に17%という数字を目標として設定しています。

これまでも、マレーシアでは、再生可能エネルギーの促進が求められていましたが、2006年から2010年第9次5か年計画では350MWを目標としていたものの、2009年時点で53MWに留まり、目標とする数値に及ばない状況となっていました。

マレーシアにおけるFITは2011年12月1日にスタートし、再生可能エネルギー促進の起爆剤となるか大きな注目を集めています。

(オ)タイ(バイオマス、風力、太陽光を中心に)

a 政府の動き

タイ政府では、エネルギー省のほか、再生可能エネルギーを含むエネルギー政策全般の最高意思決定機関として、首相府直轄のエネルギー規制委員会(ERC)と国家エネルギー政策委員会(NEPC)を設置しています。

ERCはエネルギー事業の規制、運用規則の制定を所管し、NEPCは国家的なエネルギー政策を推進する組織として位置付けられ、エネルギー省は立案と政策の実施庁としての役割を担っています。

エネルギー省が3年ごとに改訂する「電力開発計画(Power Development Plan:PDP)」では、再生可能エネルギー開発の方向性が定められており、現行のPDP2010は、2022年の中間目標として、再生可能エネルギーによる発電容量を4,803MWとしています。

特に、バイオマス、風力、太陽光発電の開発を促進するとされています。

b 企業の動き

タイでは、再生可能エネルギーを推進する政府の方針を背景に、低緯度にあり天候に恵まれて日照時間が長く太陽光発電の好条件を備えていること等から、日系企業を含む外国企業による投資が積極的に行われています。

2010年5月には、東北部のナコンラチャシーマー県で建設される太陽光発電所の設備として、京セラ株式会社が6MW分の多結晶シリコン太陽電池を受注しました。

また、2010年7月には、バンコク北部のロッブリ県で着工された73MWの太陽光発電所の設備として、薄膜太陽電池をシャープに受注しました。この発電所は太陽光発電としては世界でもトップクラスの規模になりますが、三菱商事株式会社傘下のダイヤモンド・ジェネレイティング・アジア・リミテッド(Diamond Generating Asia Limited)を通じて33.3%の出資をしている発電所であり、複数の側面から日系企業が関わっています。

タイ国内には、バイオマス、バイオガス資源も豊富なため、バイオマス、バイオガス発電も積極的に導入されており、今後複数の発電方式においてさらなる再生可能エネルギー促進が見込まれます。

・参考

JETRO「アジア大洋州の再生可能エネルギー政策」(2011年8月)

http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000695/asia_pacific_reuse_energy.pdf

<「再生可能エネルギー世界の動き」カテゴリー>

  1. 再生可能エネルギーの世界の市場規模は?
  2. どんな国が伸びているの?
  3. 再エネの今後はどうなる?
  4. 世界の普及促進策は?(1)-再エネ先進国による普及促進策-
  5. 世界の普及促進策は?(2)-東南アジアでの再生可能エネルギー普及促進策-

【再エネ基礎知識 項目一覧】

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